PINFU

毎日書く訓練

万事快調(17)

2024/01/17
「うるせえな、こんこんこんこん」
 店にはわたしたちと、向こうの席、入り口に近い席に初老のおばちゃんが座っていて、ずっとすスマホをいじっていた。喉になにか詰まっているのか、というよりもたぶんそれは癖になってしまっているんだけれど、ずっと
「んっ、んっ、んっ」
「んっ、んっ、ん」
 とやっていて、最初は気にしていなかったけれどあんまりずっとやっているから気になってきて、いよいよタケウチが
「うるせえな」
 と言った。もちろん向こうに聞こえるようにではない。わたしに向かって「うるせえな」と言った。
 ここに来たのは三十分前で、気づいたのは十五分前。前半の十五分は二人で話をしていたから気にならなかった。注文したコーヒーとモーニングが届き、小説になるといつもコーヒーを出しがちになるんだけど、喫茶店ではなくファミレスでも居酒屋でもいいはずで、しかしなんとなくいつもコーヒーを頼んでしまう。なんとなく抵抗感がある。それで運ばれてきたモーニングのパンを食べているときに会話はしなかったから耳に入り始めて、食べおわって落ち着いているとずっとそれしか聞こえなくなった。
 客はほかにはいない。休日はわりと混んでいるが今日は休日の朝なのに混んでいない