PINFU

毎日書く訓練

万事快調(16)

2024/01/16
 誕生日を迎え二十七歳になる。父に、
 おっさんじゃん
 と言われ、
 誰が言ってんだよ
 と返す。ひとり暮らしを始めてから父との関係を良くなったと思う。ちょっとそのことを書いておこうか、父は良い父だ、子どもを想い、家族想いの良い父だ。しかしわたしが大学を留年し就職活動もうまくいかずフリーター生活を実家でしているときは、父はどうしたもんか、何とかしてやりたいけど、と父も困っていたのかもしれないけれど、そのときはわたしとは関係は最高に悪くて、口も聞かないし、コミニケーションは母を経由してしている。
 あいつ今日は何してんだ?
 バイトじゃないの? 知らないわよ
 わたしが家にいない間にここから喧嘩が始まって、帰ってくると、
 なんでいつも私がこんな気持ちにならないといけないの
 といきなりフルスロットルで母に怒られる。
 いっつも私があいだに挟まれてヤンヤ言われてさぁ、知ったこっちゃないんだけど
 わたしは遅れてきた反抗期をやっていたから黙って聞いているというか、母には無視しているように見えて、呆れて、自分の寝室に入っていくまでわたしは黙っている。父は
 しーらね
 という感じですでに寝に入っている。こんな生活を一年やって、お互いにこりごりして、あるとき母とそんな話をしたことがある。
 まぁさ、お互いにいろいろ思うところあるじゃん。だから物理的に距離を置いて生活した方がいいってこともあると思うんだよ
 人によってはこの言葉は薄情に聞こえるんだろうか。でもわたしもそう考えていたし、ひとり暮らしを始められるならすぐにでも始めたかった。だからほぼフルタイムの仕事を新しく始めて、収入も毎月だいたい決まった額がもらえるようになると、ひとり暮らしをし始めた。でもそのときには両親は金銭的な援助をかなりしてくれた。たまに実家に帰れば、
 あれ食え
 これ持って帰れ
 といろいろやってくれる。
 こんな事件があった。父がリビングで『フリーター、家を買う。』の再放送を見ていた。わたしはフリーター時代で父と最高に仲が悪かったときだったから、もちろん同じ空間にはいないで、自分の部屋に、というかご飯を食べる、風呂に入る以外はずっと部屋に引きこもっていた。なにか、水を飲みにキッチンに行って部屋に戻ろうとすると、
 おい
 と声をかけられ、
 これ見ろ
フリーター、家を買う。』の父親役の竹中直人が二宮に、就活の心得みたいなことを言っているシーンだった。わたしは呼び止められて、それを見させられた。父はそのシーン見せたあと、わたしに何か言った気がする。でもわたしはろくに返事もしないで部屋に引きこもった。父は何とかコミニケーションを取ろうとしたんだと思う。今となっては、父なりに極力言葉少なに、なんとかしようとしてくれたんだと思うけれど、わたしはそれを「ありがとう!」と受け取れるにはなれなかったし、べつに今それを申し訳ないという気持ちがあるわけでもない。でもそういうことがあった