PINFU

毎日書く訓練

万事快調(20)

2024/01/21
 人が殺される夢やねん、
 うん
 年明けてそんなんばっか……でもないか、それしか、悪い夢しか覚えてない、良い夢、覚えてない
 会話を書こうとしても、これ以上進まない。でもここで考える、絞り出さないといけない、
 絞り出すのが小説ですよ
 演劇をずっとやってきましたから、会話でどうにかするしかないんですよね。もちろんト書きはあるけれど、これはあくまでも状況の説明というか、補助線でしかないので、全部会話とか動きだから、それをひねり出すしかない、次の言葉を。
 俺はなぁ、人が死んだりせえへんねん、夢で、でも自分の他に誰もいないとか、ずっと家族とか友達を探してる夢。
 自分がだれかに追われて殺されそうになるとかないの?
 だって俺以外人がいないんだもん、そもそも
 俺はちっちゃいときは、小学校で自分を殺しに来る怪物、たぶん仮面ライダーの怪人っぽいんだけど、それに追われてずっと逃げてる
 殺しに来る相手でも嬉しかったかな、ここにだれかいるっていうのが。その状況になったことがないからわかんないけど。
 マティスの話をしようとしていた。なんとなく、マティスは一発描きの、推敲しない、とそれこそ、小島信夫のような、編集者に、
 書き直すな!
 と言ったらしい。どれぐらいの口調だったのか、怒鳴るように言ったのか、割と小島信夫は怒鳴りそうな感じがする。だからマティスはずっとそういう描き方を若いときからしていたのかと思っていたらそうではなかった。
 一九三五年に描かれた「ピンクの裸婦」、タイトルを調べるためにGoogle検索したら、
「この画像は露骨な表現を含んでいる可能性があります。セーフサーチのぼかし設定はオンになっています。」
 とブロックされる表示が出た。もう二十七歳なので、水色の「画像を表示」を押せば出てくるが、たしかに言われてみれば露骨な表現なのかもしれない。めっちゃエロいかって言われればめっちゃエロくはないけれど、いちばん最初に小三くらいでこれを見たら、たぶん何度も頭の中で再生する。だし、オナニーをするときはこれを手がかりに最初はするかもしれない。
 この絵(ピンクの裸婦)は、描いていく過程を写真に撮って残していこう、と決めたらわりと苦戦したケースだと思います
 きのうも書いたハヤシバラさんは、
 十何枚目の絵で、わりといい感じになったって言うお話があった(当日はマティスが写真で残した二十四枚の制作過程の「ピンクの裸婦」の写真を二枚ずつ見比べながら、ここが前回とは変化した、ここが書き加えられた、と古谷さんがマティスになったつもりで解説していった)んですけど、せっかくいい感じだったのにマティス(古谷さん)はそれを崩して、また違うことをし始めて、なんでこんなに描き直していたのかってことをききたいんです
 ハヤシバラさんはほんとに素朴に、思ったことをポンと言う。マティス(古谷さん)は、
 もちろんいちばん最初にスライドで出したマティスの絵のように(マティス最晩年の、黒い絵の具のみで描いた絵。タイトルはわからないが、右に裸婦、左に植物のツタのようなもの。左右で下地の白黒が反転していると解説していた。それについても今度書きたい)一発で自分の目指しているものが描ければそれがいちばんいいんですけど、まぁそうはいかないから、何度も描き直して、いろいろ試行錯誤しながら、自分の理想の形に近づいていっていることだと思います