PINFU

毎日書く訓練

万事快調(14)

2024/01/14
 普通に文章が書きたい。前に書いたかもしれないが、文章を書くことでは鍛えられない。読むことでいちばん鍛えられる。書いてもしょうがないということではなくて、こんなことを四年もつづけていて、多少は上手くなったのかなと考えたときに、上手くなった感じはまったくしない。野球選手にとっての素振りは、物書きにとっては本を読むことで、でも同時に書くこともやらないといけない。
 ベースはね、リズムとメロディーと両方あってね、どっちかにしてほしいよ
 ツイッタークラフトワークのライブ映像が流れてきた。一応書いておくとクラフトワークはドイツで活動しているテクノポップの元祖のバンドだ。大学生のときにはクラフトワークYMO比較文化論を書いた。そんな大したものじゃない。卒業論文の予行演習で書いた短いもので、比較して、ドイツと日本の文化背景にムリやり結びつけたものだった。細野晴臣の話にはもちろんクラフトワークが出てくる。わたしも高校生のときに吹奏楽でチューバをやっていた。当時あこがれていた先輩が夢に出てきて、ナッツを空中に投げて口でキャッチするってやつを、失敗すると裸にされて串刺しにされて殺されるという夢で、I先輩はそのいちばん最初のヒガイ者になった。休日だったから寝ていようと思ったけれど気持ちが悪くて寝ていられないから起きた。
 どっちもやらないといけないから困る。どっちかにしてほしい。
 吹奏楽をやっていたときから本番よりも練習が好きだった。小学生のとき通っていた空手道場の流派の名前に「練」という字が入っていて、わたしは強くもなかった。成長期だから道着も小さくなって、上に羽織っている道着はおそらくオビの下にスソが太ももぐらいまでを隠すのがベストサイズで、またいろいろ思い出してくる。職場の関くんという人は若いのにオーダーメイドのスーツを着ている。そんなことはどうでもいいんだけど、みんな成長期だから腕のタケもつんつるてんになっていて、オビの下から出てくる道着のスソも、股間を隠すのがやっとで、
 いやちゃんと下を履いているので股間隠れているんだけど、長さって意味で、みんなはスポーツ用品店で買った普通の道着に、あるときから胸元に流派の名前をつけることになって、流派(いま調べたら英語ではSchoolの意味になるそうだ)によっては胸元だけじゃなく二の腕のところにも流派のマークをつけているところもあって、別段かっこいいとも当時は思っていなかったが、やるならそれぐらいまでやったほうがよかったけれど、うちの流派は胸に「練」のついた流派の名前を入れただけで、普通のスポーツ用品店で買った人はアイロンでワッペンでつけていた。それとは別に道着そのものに直接刺繍された道着も会長経由で買うことができて、それはとても高価だったが、わたしは強くもなかったのにそれを買ってもらって着ていた。それに少年野球のときも、打てもしないのにバッティンググローブは両手にはめていた。
 俺の話もでる?
 スエナガがまた今日もやってきた。二十一歳だかで自殺した、少年野球のときのチームメイトだ。スエナガの話は前に「コリジョンルール」という小説に書いた。あんまり良い作品ではない。スエナガがでたところらへんからおもしろくなる。スエナガの話は中盤ぐらいに出てくるが、
 スエナガが死んだ話は前にちょっとべつの文章で書いた気がする。
 と書いていていつも「前に書いた気がする文章」を書いている。
 スエナガには悪いけど、今日のところはこれ以上新しいことを書くつもりはないから、
 今日はごめん、とくに書き足すことはないよ
 わざわざ来たんだけどなぁ
 すぐ来れんでしょ? どんどん来いよ
 わかった。言ったね? どんどん来るよ?
 来てもいいけど乗り移ったりしないでね
 魂どおしの会話だからこっちは生身の人間だけれどスエナガがなにを言おうとしているのかがわかる。
 そのうち入ってもいいけどあと二十年くらい待って。今入られたら戻れなくなる気がする
 オッケー
 たのむよ
 バイバイ