PINFU

毎日書く訓練

カフカ短篇集読書会ノート(1)

「人間の頭というものは、語るつもりで読むせいか、つまり、選び出す操作があるために、当然、読み落されてしまう。」
 これは「選考委員は選考委員になって読んでしまうんですよ」の説明にもなっている。人は世界を(もっと素朴に、眼前にあるものを)そのまま受け止めることはできない。いつも何かのフィルターを使って自分の理解可能なものに変形させる。あるいは、一度に全方向から見ることはできないから限定された視野で見ることしかできない。もっと卑小な場合、自分の語彙の範囲でしかそれを語れない(なのに、それですべてを語れたと思う人さえいる)。
保坂和志「解説」、小島信夫『小説作法』中公文庫、p.425)